内科 感染症科 応急処置・予防 予防接種

狂犬病(きょうけんびょう)Rabies

狂犬病は、狂犬病ウイルスにより引き起こされる人獣共通感染症(動物もヒトも感染する感染症)です。イヌだけではなく、北米、中南米ではアライグマ、スカンク、キツネ、コウモリなども感染源となっています。

ウイルスは感染動物の唾液に含まれます。感染危険動物に咬まれたり、傷口、目や口の粘膜をなめられたりすることで神経系の細胞に感染します。動物は前足をなめるので、ウイルスの付いたツメで引っかかれても感染する可能性があります。発症するとほぼ100%死亡します。
日本では狂犬病はみられませんが、世界的にみれば狂犬病発生のない国はまれであり、アジア、アフリカ、中南米のほとんどの地域で流行しています。海外では動物にむやみに近づかないようにしましょう。

(厚生労働省検疫所HPから引用)

当院で接種できるワクチン

・ラビピュール筋注用(Rabipur)(乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン、国産ワクチン)

咬まれる前(渡航前)の接種(PrEP:pre-exposure prophylaxis) スケジュール

渡航前に、0、7日目、21-28日目の3回接種(筋肉注射)して基礎免疫が完了します。

狂犬病ワクチン接種を3回済ませた人は、狂犬病流行地でイヌなどに咬まれない限り、狂犬病ワクチン接種の必要はないといわれていますが、繰り返し狂犬病常在地に渡航される方には、5年に1回の追加接種が勧められます。

ここから先は、万が一、渡航先で狂犬病危険動物に咬まれたりした場合の対処法です。

咬まれた後の接種 (PEP: post-exposure prophylaxis)

狂犬病常在地でイヌなどの狂犬病危険動物に咬まれたり、引っかかれたりした場合は、狂犬病の発症を予防するために、下記のような「狂犬病暴露後発症予防」を受ける必要があります。

ただちに傷口を石鹸と流水で十分に洗浄してください。環境中ではすぐに感染力が弱まるウイルスです。粘膜から感染する可能性があるので、決して傷口を口で吸いださないでください。その後、できるだけ早く医療機関を受診してください。
下記、世界保健機構(WHO)によるカテゴリー別の対処法を基準にして、対応法が定められています。

カテゴリー危険度動物との接触の内容勧告される予防治療
危険性なし動物をなでた、餌を与えた
傷や病変のない皮膚を舐められた
接触歴が信頼できれば治療は不要*
低い危険性素肌を軽く咬まれた
出血のない引っ掻き傷やかすり傷ができた
直ちに狂犬病ワクチンを接種
高い危険性1カ所以上皮膚に咬傷か引っ掻き傷ができた
引っ掻き傷、傷がある皮膚を舐められた
動物に粘膜を舐められた
コウモリと接触した
直ちに狂犬病ワクチンと狂犬病免疫グロブリン*を接種

カテゴリーIIとIIIでは、咬んだ動物が適切な方法で狂犬病陰性と判断されたら治療を中止することができます。
*狂犬病免疫グロブリンは、非常に流通が少なく、ごく一部の医療機関でしか投与を受けられないため、渡航先の国によってはないかもしれません。日本では接種できません。

  • 暴露後の狂犬病ワクチン投与について

・暴露前の予防接種(PrEP)を受けていない場合
狂犬病ワクチンを暴露後予防として、0、3、7、14、28日の5回接種します。

・PrEPを受けている場合
狂犬病ワクチンを、0、3日目の計2回接種します。PeEPを受けていると回数が減りますね。

ただし、国、地域によりワクチンの種類や接種スケジュールが異なる場合がありますので現地の医療機関の指示に従いましょう。日本に帰国後につづきのワクチン接種を受けることも可能です。

ご不明点などあれば、気軽にご相談ください。

参考文献)海外渡航者のための予防接種と感染症の知識 高山直秀、菅沼明彦