百日咳は主に百日咳菌(Bordetella pertussis)を原因とする急性の気道感染症です。いずれの年齢でも感染しますが、小児が中心です。
今年は全国で流行しており、当院でも小学校高学年~中学生における感染がしばしばあり、咳が強く長いことが多いです。
感染経路
飛沫感染:感染者の咳などで、百日咳菌を含む飛沫(小さな水滴)が飛び散ります(2m以内)。それを吸い込むことで感染します。
症状
百日咳の症状は三段階で進行します。
- カタル期:最初の約1〜2週間。鼻水、のどの痛み、微熱、軽い咳といった、いわゆる風邪と似通った症状。
- 咳嗽期:約2〜6週間。強く特徴的な咳※が出やすい時期です。
- 回復期:咳の回数や激しさは少しずつ改善していきますが、完全に回復するまでには3〜4週間以上、場合によっては1か月以上かかることもあります。
※発作性の咳き込み、笛のように大きく息を吸う咳、せき込み後の嘔吐、がよく見られます。これらがあれば、早期に受診することをお勧めします。
生後6か月未満の乳児に発症すると、重症化し、肺炎、脳炎などを合併することがあるため注意が必要です。
検査
当院では主に、遺伝子検査の一種であるLAMP法を用いて検査しています。鼻腔を綿棒で拭って検体を採取します。結果は、5-7日後に判明します。
治療
百日咳菌を消すために、マクロライド系の抗菌薬を内服することが治療となります(クラリスロマイシンであれば1週間内服)。
百日咳は、菌から放出される毒素が原因で咳が出ます。その菌を早いうちに消すことができれば、出てくる毒素を少なくして、菌の排出も抑えることができるので、咳の症状を軽くしたり、感染拡大を抑えたりすることができます。クラリスロマイシンを5日間飲むと、基本的には他者に感染させることはなくなります。
逆に抗菌薬による治療の開始が遅くなると、症状を緩和できません。多くは自然治癒しますが、咳が長引いたり、乳幼児では重症化したりすることもあります。
このため、百日咳にかかっている人とある程度の接触があったり、症状から疑わしかったりする時は、検査の結果を待たずに早期に治療を開始しています。
予防
・ワクチン
幼少期の定期接種に含まれる、3種混合、4種混合、5種混合ワクチンには百日咳のワクチンが含まれており、予防効果があります。
しかし、抗体価は徐々に低下し、学童期に入る頃には、感染を予防できるレベルを維持できなくなります。このため、任意で、学童期の子どもや妊婦の方に、百日咳の抗体を上げるためのワクチンを追加で接種することができるのですが、最近は製造中止などで入手困難です。
・咳エチケット
百日咳であれ普通の風邪であれ、激しい咳があるときは、外出を控える、ひととの接触を避けることは、ひとにうつさないために有用ですね。感染のリスクの高そうな人込みにいくときは、自らマスクをすることも予防のひとつです。
百日咳による咳は激しく、日常生活の負担となることもあります。名のごとく100日続くこともあります。しかし、いずれは良くなりますので、その辺は安心してください。
