
喉の痛み、鼻症状と一緒に咳があるとき、これはウィルス感染による気管~気管支の炎症(=気管支炎)がほとんどです。ウィルス性なので、ここでは風邪の一種と考えます。よって特別な治療薬はなく、自然によくなっていきます。
しかし、肺の中の肺胞に炎症がおきる肺炎は、成人では細菌による感染のことが多く、抗生剤による治療を要します。一方、小児の肺炎は、ウィルス性が最も多いです。
咳の原因と考える場合は、咳の持続時間も重要で、発症後3週間以内(急性)、3-8週(遷延性)、8週以降(慢性)と分類して、それぞれの原因を考えます。今回お話しする感染による気管支炎、肺炎は急性の咳に分類されます。
ウィルス性の気管支炎の咳の多くは、1~3週間(成人では中央値は18日)続くといいます。風邪のあと咳がつづくなぁというとき、解熱していて元気もあるならば、咳は徐々に減っていくので3週間ほどは様子をみてもよいでしょう。
では、どのようなときに肺炎を疑うのでしょうか?
① 喉の痛みや鼻症状はなく、悪寒を伴う38度以上の発熱(または寝汗) + 咳で発症
(細菌は一つの臓器に感染する、の原則です)
または、
② 風邪(咽頭痛、鼻症状、咳など)が軽快したあとに、咳・発熱が再燃(二峰性の経過)(図1)。例えば、喉の痛みと37度程の微熱があり、3日くらいで軽快してきたが、その後数日してから38度台の発熱と咳が出現した
などというときです。

小児では、重症度が高い場合(顔色不良、ぐったりしている、食事が摂れない、呼吸回数が多い、SpO2が低いなど)や、ある時期からぐっと症状(咳や全身状態)が悪くなった場合に肺炎を考えます。
治療・セルフケア
気管支炎、(ウィルス性の肺炎)
・ほとんどは自然に良くなるので、対症療法です。
・咳は異物の侵入を防ぎ、痰を気管から喉の外に排出する、という体の防御反応です。よって、基本的には止めないでよいのですが、咳がひどくて眠れないような時は、咳止めを使うことを考えます。
・特に小児では、咳止めの第一選択はハチミツです。ハチミツには咳を止める効果があることがわかっており、その効果は一般的な咳止めと同等とされています(BMJ Evid Based Med. 2021;26(2):57. 2020 )。加えて、ハチミツには副作用がありません。ただし、ボツリヌス中毒のリスクがあるため、1歳未満の小児にはハチミツは与えないでください。
<咳止めとしてのハチミツの投与量>
2-5歳:ティースプーン 1/2杯 (2.5ml)
6-11歳:ティースプーン1杯 (5ml)
12-18歳: ティースプーン2杯(10ml)
・十分な水分補給は、気管支からの分泌物を薄め、粘膜を落ち着かせることができます。
・温かい液体(お茶、スープなど)を摂ることは、呼吸器の粘膜を落ち着かせる効果があり、鼻汁の流れがよくなり、喀痰が柔らかくなって除去しやすくなります。
・タイム(Thymus vulgaris)は鎮痙作用と去痰作用をもつため、気管支炎に用いられます。タイムのティーにハチミツを入れると最適ですね。セージ、エルダーフラワー、ペパーミントをブレンドするとよりいいと思います。
・診察、問診により、咳をしている体の状態に合った漢方薬を内服すると効果的です。
・中医学の養生では、咳のでるときは、呼吸器系の炎症を引き起こすとされるエビ、カニ、青魚は控えるようにといわれます。
・ツボ:中府(ちゅうふ)鎖骨の外端下にあるくぼみから、親指1本下がったところ。痰がらみの咳や息苦しい時に。気管支の炎症を鎮めてくれるといいます。自分やお子さんがせき込んでいる時に押したり温めたりするといいですね。

細菌性肺炎
・患者さんの年齢、基礎疾患などにより感染する細菌が異なります。
・喀痰がでる場合は、喀痰を採取して、グラム染色と培養検査により、どんな細菌が原因かを調べます。尿検査で肺炎球菌、レジオネラを調べることもあります。
・喀痰の結果が出るまで数日間かかるため、それまでは推定した細菌をカバーする抗生剤を内服します。喀痰検査で細菌が判明したら、その細菌に最適な抗生剤に変更することもあります。
・前述した気管支炎の治療・セルフケアが有効です。
今回は咳の原因として最も多い風邪の咳と、肺炎についてお話ししましたが、気管支喘息、咳喘息などについて、また呼吸器以外による咳については、またの機会に記事にしたいと思います。