寒さが緩み、雪も解け、少しほっとしています。
前回(「脂質異常症 (1)」)の続きです。脂質異常症の予防と治療を、生活の工夫を中心にお話したいと思います。
予防・治療の基本は、生活習慣の改善です。生活習慣の改善は、食事・運動療法、禁煙、肥満対策などを含みます。
これらは、脂質異常症だけではなく、高血圧症、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、筋力低下、骨粗しょう症、認知症などの予防と治療にもなります。病気を発症する前から、若いうちから、心がけていくことが有用だと思います。
食のポイント
① 適正体重の維持と栄養素配分のバランス
標準体重と日常生活活動度を基に、自身の1日の総エネルギー量を算出し適正化します。
エネルギー比率は脂肪20-30%, 炭水化物50-60%がよいといわれます。
② 炭水化物の選択
・ショ糖(砂糖)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)を摂り過ぎない
・食物繊維を多くとる(未精製穀類、大豆・大豆製品、野菜、果物、海藻、きのこ、こんにゃくなど)←腸内で中性脂肪やコレステロール
を吸収して排泄してくれます。
③ 食塩を減らす(6g/日未満)
日本人の食塩摂取量全体の60%を、醤油や味噌などの調味料から摂取しているといわれています。薄味を心がけましょう。
④ アルコールを25g/日以下に抑える、できるだけ減らす
アルコール25g/日の目安は、ビール大瓶1本(633ml)、日本酒1合強、ワイン 250ml程度
肝臓をやすませるためにも休肝日は少なくとも週2回は設けたいです。
⑤脂質の選択
・コレステロール、飽和脂肪酸の多い食品を摂り過ぎない
・n-3系多価不飽和脂肪酸、特に魚油を摂る
・n-6系多価不飽和脂肪酸、特にリノール酸を摂る
普段から、食材や料理を選ぶときに、“摂りたいもの”を多く含むものを積極的に選び、逆に“摂りたくないもの”を控えめにしていくと、自然に予防と治療になると思います。下の図をご覧ください。肉類と魚類のコレステロール、飽和脂肪酸(摂りたくないもの)とn-3系不飽和脂肪酸(摂りたいもの)のgあたりの含有量を示しています。摂りたくない飽和脂肪酸は鶏皮、ばら肉、ロースに多く含まれます。コレステロールは肉類では鶏皮、臓物に、魚類では、イカ、エビ、うなぎ、魚卵(いくら、たらこなど)、その他、鶏卵、バター、マーガリンなどに多く含まれます。摂りたい-3系不飽和脂肪酸は、さば、ぶり、まぐろ、いわしなどの青魚に多く含まれます。


・油については、市販の菓子類などに用いられているやし油(ココナッツオイル)とパーム核油は飽和脂肪酸(摂りたくないもの)が約80%を占めており注意してください。逆に、良質なあぶらの例として、ひまわり油、ごま油、大豆油(リノール酸)、しそ油、えごま油(α-リノレン酸)、オリーブ油(オレイン酸)などがあります。ただし、油は大さじ1杯(12g)で約100kcalとエネルギーが多いため、使い過ぎには注意が必要です。
運動のポイント
身体活動量が多いひとほど、心疾患やがんによる死亡率だけでなく、すべての死因を含めた死亡率が低いというデータがあります。動くと精神的なストレスも減ります。動くって大切だなと思います。
座位行動の多い生活(座りっぱなしの生活)も動脈硬化の危険因子といわれています。私もですが、デスクワーク中心の人は気を付けたいですね。
1日1回10分程度の運動でも、動脈硬化を防ぐ効果はあるといわれています。10分程度の運動をちょこちょことする、これならできそうですよね。まずは、「プラステン(=今の生活に10分間運動を加える)」から始めましょう。
以下に厚生労働省が示している運動療法指針を示しますが、これにこだわらず自分に合ったものを行ってください。
種類:有酸素運動を中心に(ウォーキング、速歩、水泳、エアロビ、ゆっくりジョギング、自転車など)
強度:中等度以上
頻度・時間:1日合計30分以上、週3回以上(可能であれば毎日)
その他:こまめに歩く、できるだけ座ったままの生活を避ける
薬による治療
生活習慣の改善を行っても十分な効果が得られなかったかたや、動脈硬化による疾患の発症リスクの高いかたは、生活習慣の改善と併せて薬剤による治療を行うことができます。
動脈硬化の個々の患者さんの病態や適応に応じて、薬剤を選択します。
高LDL-C血症の第一選択薬はスタチン(プラバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチンなど)が推奨されており、基本的には1日1回1錠を内服します。効果的な薬剤です。副作用として肝障害や横紋筋融解症がありますが、非常に稀といわれています(横紋筋融解症はスタチン服用者の0.001%と報告)。
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