子どもの頃に、朝起きてすぐ、お尻にセロハンをぺったんと貼り付ける検査をしたことを覚えていますか?あれは蟯虫の検査でした。
蟯虫症は5-10歳の子どもが最も多くみられます。
学校保健安全法施行により昭和33年から蟯虫検査が小学3年生以下に行われていましたが、検出率は激減し1%以下となったため平成27年限りで廃止されました。
しかし、蟯虫症がなくなったわけではありません。現在でも蟯虫症患者数は年間 28,000 人と推定されます。数年前に神奈川県の保育園で蟯虫症が広がったことがありましたし、沖縄県ではまだ蟯虫検査が行われている学校がありますが、陽性者が出ることがあります。
蟯虫とは?
蟯虫の成虫は長さ数mm~十数mmで、主に盲腸に寄生します。蟯虫のメスは夜間に腸管から肛門の外へ出て、肛門周囲の皮膚に卵を産みつけます。この時に肛門周囲に強い痒みを生じ、かくことで手指や爪の間、下着や寝具に卵が付着し、生活環境に散布されます。卵は環境中で2~3週間生存します。手指に付着した卵、あるいは居住環境中に落ちて舞い上がった卵を口から飲み込むことで感染するため、ヒトからヒトに感染し、家族内感染や再感染が起こりやすいです。
症状
症状がないことが多いですが、有症状者は肛門付近を痒がり、夜寝不足になったり、落ち着きがなくなったりすることがあります。まれに、膣や子宮に炎症を起こすことがあります。
検査
起床直後に検査用のセロハンを肛門周囲に押しつけ、顕微鏡で卵を検出します。
肛門周囲や便中に上記の写真のような白い虫体がうねうね動いている場合もあるので、採取して袋や入れ物に入れたり、写真を撮ったりして受診時に持ってきていただいてもいいです。
治療
症状がなければ、必ずしも治療する必要はないといわれています。
肛門が痒いなどの症状がある場合は、コンバントリンという駆虫薬を内服して治療します。駆虫薬は成虫には有効ですが幼虫には無効なため、初回と、初回治療時の幼虫が成虫になる2週間後の2回、駆虫薬を内服します。
本人だけ治療しても、家庭内に感染者がいると治癒後に再び感染するため、家族一斉に治療をすることをおすすめします。床、ドアノブ、布団などの環境中にある卵をなくすために、駆虫薬を内服する日に室内やおもちゃの清掃、寝具を干す、シーツを洗うなども行います。
再感染により治療が奏功しないことが多いため、治療の成功率を上げるためには、治療期間中は特に次の予防に書いたことを行うことをおすすめします。もちろん、できる範囲で。
再発を繰り返す場合はメベンダゾールという薬がありますが、日本では保険適応外です。
肛門が痒いとき、痒み止めなどの軟膏を塗ると緩和することがあります。
予防
・食事や調理前、トイレの後、オムツを交換した後に石鹸と温水で手を洗う(最も有効)。
・蟯虫は熱に弱いので、40℃以上の温水で洗濯し、乾燥機(高温)か晴れていれば外に干す。
・治療中は毎朝、下着とシーツを交換する。
・毎朝、ウォシュレットやシャワーで肛門を洗う。
・爪を短くする、爪を噛まない。
お尻が痒くて困っているという方、なかなか蟯虫が消えないという方、ご相談ください。